インタビュー

庵治石の魅力

庵治石の新たな可能性を見出すきっかけとなった、建築との出会い。庵治石の魅力、そしてこれからをテーマに、建築の視点から見た庵治石について、グッドデザインスタジオの香川先生をお招きしてお話を伺いました。(取材日時2017年1月 三好康治は現在は代表取締役会長です。)

新たな価値を見出した建築とのコラボレーション。

まずは、庵治石が建築に取り入れられたきっかけを教えてください。

三好
墓石材として加工することが多い庵治石ですが、墓の形にするために余分なところをカットします。これまでそのカットした部分は天然素材でも商品価値がなく廃棄に近い状態でした。そこに目を付けたのが香川先生だったんです。
香川
トラックに積み込まれた石をひっくり返して、これ使おう!と言ったことを覚えています。(笑)個人宅の庭や塀に使ったんですよね。
三好
これまではあまり価値がないと思っていたものが香川先生によって新たな命を吹き込まれたような気がしました。完成した家を見せてもらったのですが、感動しましたね。
天然素材の石を建築に取り入れる…。このことをきっかけに私の視野も広がりました。
香川
今までも石はさまざまな建築家が取り入れています。建築家の杉本貴志氏はシンガポールのグランドハイアットで庵治石を使っていますが、庵治の職人も行ったと聞きました。庵治石は石も職人も一級品なんですよね。
三好
ありがとうございます。我々は石の専門家ですが、異業種の方からも“いい”と言っていただけるのは本当に嬉しいです。

緊張と緩和を備えた表現力の豊かさが魅力。

グッドデザインスタジオから見た庵治石の魅力は何ですか?

香川
私が手掛けるのは商業施設。当社ではデザインが先行しすぎないということを大切にしています。なぜなら個々に使用目的が違うから。
本来の目的である「人が集まる空間」「コミュニケーションを生む場」ということを忘れてはならないんです。それが商業施設の空間デザインを任された私たちの使命なのですから。
三好
香川先生がデザインした施設は雰囲気が良く、漂う風情がある。言葉にするのは難しいのですが、「何かいいよね」という感じ。だから、どのお店も繁盛しています。
香川
庵治石には青みがかったところと黄みがかったところがあります。この表情は豊かさだと感じています。石は堅いのに、緊張と緩和の両方を備えている。それが建築の目線から見た庵治石の魅力です。
三好
おさまりも大事ですね。石かどのエッジを利かせるか!叩いておさえるか!で場の雰囲気が一変します。
香川
そうです。石もひとつの要素です。もちろん、全体とのバランスも大切ですが、丸みを持たせる部分、石の質感を見せる部分などいろいろ使い分けています。
三好
香川先生の手掛ける空間はコンセプトを持っていると思います。素材の持ち味にも細かく心配りをしているとは・・・。驚きました。


上 Bar 足袋
下 ホテル川六

石だけでなく職人の質も高く、他にない唯一の存在。

他と比較して庵治石の魅力をどう感じますか?

香川
墓は経年劣化が少ないために石を使っているわけですが、“石に時代がつく”というのはいいことだと思うんです。
でもくたびれてはいけない。庵治石は堅いから変化が少ないんです。瀬戸内海周辺には庵治石に似た石が採れる場所がありますが、きめの細かさ、品質の良さを考えると庵治石のポテンシャルは飛びぬけて高いです。やっぱり比較しないとその良さにはなかなか気づかないですよね。私も国内外でいろんな産地の石を見るなかで、庵治石の良さを感じることができました。これは世界で唯一ですよ。
三好
庵治石の素材の良さもさることながら、この地、庵治産地には、腕の良い職人さんが多くいて、技術継承もしっかりされています。石の仕事では石に助けられ、職人さんに助けられています。
香川
職人が海外へ石をもっていったというエピソードからも、職人の質の高さを感じますね。一方で、石は山から切り出す資源なので有限ですが、今後はこのことについてはどう考えていらっしゃるのですか?
三好
私は常々採石したものをお金に換えるという仕事ではなく、価値を作っていく仕事をしたいと考えています。それは文化の創出でもあります。例えば石でお墓を作るという行為は先祖への敬い・感謝を表現したものです。そして、そこに手を合わせ脈々と想いを受け継ぐんですよね。
香川
なるほど、ものづくりで終わらず、その先の文化まで見ているのですね。だから職人の腕も伸びるし、産地としても残っていくんですね。

左 ホテル川六
中央/右 Bar 足袋

石を超えて誇りになる。そこに魂がある限り。

今後の庵治石の未来はどうなると思いますか?

香川
世界に出ていくべき素材だと思いますね。
三好
庵治石は、石を叩いた石屋が認めた石です。全国の石工さんの保障つきです。
香川
私はこれからも庵治石を使い続けると思います。それは自分がここで生まれ育ったという背景もあります。その地で採れたものを建築に取り入れるというのは、物語が加わってより愛着も増しますしね。
三好
香川先生の手掛ける空間には情や想いがあります。それが大切なんでしょうね。合理性だけを追求していたら、ああいう心地よさはでないと思います。今回お話を聞いていても、やっぱり、“心がある”と感じました。それからコンセプトも大切にされていると気づきました。
香川
そこは大切にしていますね。魂を込めたものづくりをしている人となら、友達になれるんですよ。(笑)
単に人が入る箱を作ればいいというんじゃない。そこにある何かに語れるストーリーがなければ、誇りも生まれません。それが商いの形なんですよ。
三好
石に想いをかけることが、誇りになっていくんですか?
香川
主が自分のお店に誇りを持てたら、自然と従業員にも語ると思うんですね。そしてその従業員が次に語り継いでいくことで、誇りにもなっていく。そういう魂を込めたものは広がっていきますよね。
三好
“想い”や“意図”があるから感動を与えるということですね。
香川眞二
グッドデザインスタジオ有限会社 代表取締役
県内外の商業施設を手掛ける空間デザイナー。
http://good-design-studio.jp/
主な実績/小豆島の「島宿真里」、高松市のバー「足袋」、流石Le蔵(銀座、蕎麦屋)、かどや霞邸(西麻布、居酒屋)、伊織京都三条通店(京都、今治タオル専門店)など
三好康治
株式会社三好石材 代表取締役
明治33年の創業以来、丁場の中でも、最高品質の庵治石が採れるといわれている「大丁場」を預かる。近年は、庵治石を使った建築家や他業種の方たちと一緒に新しいことにもチャレンジしている。
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