庵治石について

“石のダイヤモンド”と
称される国産最高級石材

「庵治石(あじいし)」という石の名前をご存じでしょうか。庵治石とは、日本を代表する最高品質石材の一つ。香川県高松市庵治町および牟礼町でのみ採掘されています。

庵治石は、“石のダイヤモンド”とも称され、

  • 美しさ
  • 希少性
  • 高い耐久性

このような特性を持っていることから墓石材や建築資材として国内外で高い評価を受けています。

庵治石の特長 -最高級石材の理由-

庵治石は、風雪に耐える硬い石質と優美な光沢と色目が調和した風格を持ち、古くから最高級の石材として称えられています。

その特長のひとつが、非常に硬いことです。構成鉱物の結晶が極めて小さく、密に結びついているため、他の地域の花崗岩と比べても硬く、耐久性に優れています。硬度は水晶と同じモース硬度「7」で、ノミなどの道具を当てても崩れることなく、むしろ研磨したように美しい風合いが際立ちます。この性質により、細やかな彫刻や加工も可能です。

また、庵治石は水をほとんど吸わないため、風化や変質に強く、長い年月が経っても崩れたり変色したりしにくいのが特長です。そのため、磨かれた艶も持続し、美しい状態を保ち続けます。

しかし、山から採掘された庵治石の原石にはキズがあります。これは加工時にできたものではなく、石が長い年月をかけて形成される過程で自然に生じたものです。実は、庵治石はキズが多く、色合わせや模様合わせが非常に難しい石材です。そのため、原石から製品として使えるのはほんの数%にすぎません。

こうして厳選された庵治石だからこそ、代々受け継がれる墓石やシンボルにふさわしい石材といえるのです。

庵治石の歴史

庵治石の採掘は、遠い昔、和泉国や河内国から訪れた石切大工によって始まったといわれています。

数ある花崗岩の中でも、庵治石が特に重宝される理由は、その独特の風合いと、長い年月の風雪に耐える硬く美しい石質にあります。石目が細かく、繊細な細工に適していることから、彫刻や建築用途に広く活用されてきました。さらに、その優れた特性から、墓石や灯籠においても他に類を見ない最高級品として使用されています。

現代の石材業界では、設備の合理化・近代化が進んでいますが、庵治石の加工は、受け継がれてきた伝統と高い技術によって支えられています。その結果、香川県の「庵治・牟礼」は、茨城県の「真壁」、愛知県の「岡崎」と並び、日本三大石材加工地の一つとして、世界的にも高い評価を受け、発展を続けています。

目利きの職人が認める
“庵治石の魅力”

石には、硬いものもあれば、やわらかいものもあります。土に近い石もあれば、しっかりと硬い石もあります。そんな数多くの石の中で、庵治石は長年にわたり採掘・加工される中で、その素晴らしさが見出された石です。庵治石が「良い石」として広まったのは、石そのものの品質はもちろん、職人たちの目利きによって選び抜かれた石だったからだといえます。

庵治石の原石を仕入れた職人たちは、それを切り出し、磨き、墓石に名前を彫るなどの加工を行う中で、その価値を実感してきました。庵治石には「ねばり」があります。といっても、納豆のような粘りではありません。この「ねばり」によって、石が細かく割れるため、大きな欠けが生じにくく、繊細な細工が可能になります。例えば、小さなお地蔵様の繊細な目や眉を丁寧に彫り込めるのも、庵治石ならではの特性です。

このように、優れた特性を持つ庵治石は、高価であり、貴重な資源でもあります。そのため、庵治石の産地では、一つひとつを大切に扱うことが職人たちの間で受け継がれてきました。技術とともに、この思いを未来へつないでいくことが、庵治石の価値を守ることにつながるのです。

世界でも珍しい
“庵治石の斑(ふ)”

庵治石には、小さな黒雲母が豊富に含まれており、磨けば磨くほど艶を増し、青黒く細やかな紺がすりのような美しい風合いになります。さらに、庵治石ならではの最大の特徴として、「斑(ふ)が浮く」という現象があります。これは、石の表面にまだら模様が現れることで、指で押さえて潤いを与えたような独特のかすり模様が二重に浮かび上がるものです。

庵治石の正式名称は「黒雲母細粒花崗閃緑岩(くろうんもさいりゅうかこうせんりょくがん)」です。主な成分は石英と長石で、そこに少量の黒雲母が含まれています。この黒雲母の影響により、庵治石特有の「斑(ふ)」が現れるのです。

庵治石は模様の細かさによって「細目(こまめ)」と「中目」(ちゅうめ)に大別されます。

特に、より繊細で美しい模様を持つ「細目」は希少価値が高く、貴重な石材として扱われています。

庵治石の「大丁場」を受け継ぐ

「丁場」とは、石材を採掘するための石切場のことを指します。

私たち三好石材は、明治33年の創業以来、数ある丁場の中でも特に格式の高い「大丁場」を受け継いできました。この大丁場は、藩政時代に高松藩の御用丁場として使われ、最高品質の庵治石が採れることで知られています。長年にわたり、この伝統ある丁場を守り続け、良質な庵治石を提供し続けています。

大丁場とは

庵治石の産地は、香川県の庵治町と牟礼町にまたがる霊峰「五剣山」。その北西には、銘石「庵治石」が眠る4つの丁場群が広がっています。

その中でも、藩政時代に高松藩の御用丁場として石を切り出していた場所が「大丁場」です。ここは、最高品質の庵治石が採れることで知られ、古くから特別な採掘場として扱われてきました。

この大丁場を代々受け継ぎ、守り続けてきたのが「庵治大丁場石の会」です。山石の匠たちが集まり、山への畏敬の念と感謝を持ちながら、世界に誇る銘石を採掘し、その価値を伝え続けています。

庵治石は“職人の想いが伝わる”石

石を彫る、石を削る、カタチを整える。どれもつくり手である職人の気持ちが受け止められる素材でなければ本当に良いものはできません。

庵治石は針ほどの細い一点でも、「しっかりと職人の気持ちを受け止めてくれる石」だと、熟練の職人たちは言います。

庵治石には、石でありながら「ねばり」があるため、細かな細工をしてもこぼれません。また、表面の目が細かく詰まっていますので、トントンと表面部分をたたくことで、ざらざらしなくなり綺麗な状態に変わっていきます。

この特性により、墓石に使用した場合でも、ノミの一点で美しく彫ることができるのです。

庵治石なら、お地蔵様の繊細な目や眉も美しく刻め、鼻筋もすっとした柔和な表情に仕上がります。

石にほめられる仕事をする

これほどまで職人の気持ちを受け止めてくれる石は、なかなか他では見つかりません。そこで職人たちは、自分達が死んだ後にも残る「石の仕事」をしているのですから、何十年、何百年後も、自分たちの仕事を見た人々に誇れるものにしようと考えています。ひとことで表現するなら

“石にほめられる仕事をする”

このような想いで三好石材は庵治石と向き合っています。